伝聞昔話「桃太郎」(楽しい民話)
伝聞昔話「桃太郎」
お爺さんとお婆さんは夢を見ました。
「お前さんたちにとても強い子供を与えよう。その子供を桃の汁で育てるとよい」
何かが言っている夢でした。
お爺さんとお婆さんはずっと子供が欲しかったので、その夢を神様の夢と、とても喜んだのでした。
そしてお婆さんは川で洗濯をしていると、大きな桃がどんぶらぁこどんぶらぁこと流れてきたのです。
お婆さんは驚きましたが、この桃はきっと神様が下さった桃だろうと大喜びで家に持ち帰ったのです。
お爺さんとお婆さんがこの桃をどうすればいいのか悩んでいると、桃は勝手にぱかっと割れ中から元気な赤ん坊が出てきたのでした。
お婆さんは夢の通りに桃の果肉をしぼりその赤子に与えたのでした。
お爺さんとお婆さんはその赤子に桃太郎と名付けたのです。
桃太郎はすくすくと力強く育ち一カ月ほどで元気な少年となりお爺さんの狩りを手伝ったのでした。
お爺さんから命の大切さを桃太郎は教わったのです。
桃太郎はまだ少年でしたがどんな大人にも負けない体力を持っていました。
お爺さんは腕のいい猟師でした、そのお爺さんの手伝いをしていた桃太郎も腕のいい猟師になったのです。
ある日のことです。
桃太郎の家に娘がやってきました。
その娘は長さ五尺、重さが十五貫もある大きな刀を持っていたのです。
「私の村は鬼たちに潰されてしまいました。父は腕のいい鍛冶屋だったのでこの刀で仇を取ってくれと私に托したのです」
娘は涙ながらにそう語ったのです。
「私が鬼を退治しましょう」
そう言うと桃太郎はその刀を軽々と持ち上げて見せました。
桃太郎はお婆さんが作ってくれたきび団子を持ち鬼の退治に出たのです。
桃太郎が道を進んでいると、
「桃太郎さん、桃太郎さん鬼の退治に行くのなら私が力を貸しましょう。私にはどんなものでも見つけることのできる良い鼻があります」
一匹の大きな犬が桃太郎に語りかけてきたのです。
名を名乗っていないのにこの犬が桃太郎の名前を知っているのはきっと神様がよこしてくださったのだろうと思い、きび団子を与え共に鬼退治に行くことにしたのです。
「桃太郎さん私がその刀に残る鬼のにおいで鬼の居所を見つけましょう」
そう言うと犬は桃太郎の持つ刀のにおいをかぎ、桃太郎を導いたのでした。
道の途中です。
「桃太郎さん、桃太郎さん鬼の退治に行くのなら私が力を貸しましょう。私になんでも器用にこなす腕があります」
一匹の猿が桃太郎に語りかけたのです。
この猿もきっと神様がよこしてくれたのだろうと思い、きび団子を与え共に行くことにしました。
「桃太郎さん、桃太郎さん鬼の退治に行くのなら私が力を貸しましょう。私にはどんなものでもとりこにする美しい羽があります」
美しい雉が桃太郎に話しかけてきたのです。
桃太郎は雉にきび団子を与え共に行くことしたのです。
そして桃太郎達は海に出たのです。
「この海はどうやって越えればいいだろう」
桃太郎が悩んでいると、
「桃太郎さん私と共にいかだを作りましょう」
そう猿が言うので共にいかだを作りました。
桃太郎たちは作ったいかだで海を越え鬼たちのいる島、鬼ヶ島についたのでした。
鬼ヶ島にある鬼たちの住む城の大きな門は固く閉じていました。
「私におまかせなさい」
そういうと雉は門を飛び越え城の中に入っていったのです。
「なんという美しい雉だ、捕まえろ」
鬼たちは雉を捕まえようと大騒ぎです。
雉が門を飛び越え桃太郎たちの所へ戻ってきますと、雉を捕まえるために鬼たちは城の門を開けたのです。
「雉はどこだ」
鬼たちが恐ろしい声で叫んでいます。
猿は木に登りその鬼たちに雨のように矢を放ったのでした。
急に飛んできた大量の矢によって鬼たちは大混乱になりました。
混乱している鬼たちに桃太郎は
「我は天下一の戦士、桃太郎なり」
と言い、娘から託された刀を握り嵐のように切りかかったのでした。
鬼たちはとても大きな刀を軽々と振り回す桃太郎に恐怖しました。
そして大粒の涙をぼろりぼろりと流しながら許しを請うたのです。
「お許しください。お許しください何でも言うこと聞きますから、どうかお許しください」
鬼たちは泣きながら桃太郎に言ったのでした。
桃太郎たちは鬼から財宝を取り返し皆で幸福に暮らしました。
鬼たちは桃太郎の振るった刀を鬼泣きと呼び恐れたそうです。
聞き伝える昔の話でございます
やりたい放題。
桃太郎は有名ですが、物足りない話でもあります。
猿犬雉って鬼退治にどうなのとか。
きび団子だけでいいのとか。
きび団子になにか怪しげなものが入ってたりとか、
いろいろ考えるのが楽しい話でもあります。
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。