伝聞昔話「多田新発」(宇治拾遺物語より)
伝聞昔話「多田新発」
鹿は身を投げ出すように逃げていました。
多田新発の弓から逃げていたのです。
多田新発は多田満仲の部下です。
評判の悪い部下です。
命で遊ぶことに溺れていました。
野に出、山に入って鹿を狩り、鳥を取るのを楽しみとしていたのです。
新発は鹿を見失いました。
ふと地蔵様を見つけました。
新発はその地蔵様に手を合わせたのです。
何年もたたずに、新発は病で死にました。
これまで遊んだ命が復讐するように新発は苦しんで死にました。
冥途で新発は閻魔庁に引き出されました。
新発の目に多くの罪人が打たれ、罰せられているのが映りました。
叫び声が新発の体に染み込んでいくようでした。
言葉にできぬむごい有様でした。
新発は怯えました。
自分の罪業を思い、涙を流しふるえていました。
自分が笑って殺してきた動物たちが、自分の姿を見て笑っていると感じました。
ただ涙を流しふるえていました。
そんな時です。
一人の僧があらわれました。
「お前を助けようと思う」
僧が言いました。
「お前が鹿を追っていた時に祈った地蔵である。お前の罪は重いが、早く故郷へ帰り、罪を懺悔せよ」
僧がそう言うと、新発は目を覚ましました。
新発が地蔵様に祈ったので、地蔵様が救おうと夢を見せたのでした。
新発の体はとても調子がよく、病気も治っていました。
そして新発はその地蔵様に仕えたのでした。
聞き伝える昔の話でございます
宇治拾遺物語からです。
そこからばっかじゃんみたいな。
この救われる話は多くあります。
仏様は俗人に甘いのです。
僧にはきついですね。
お米少しごまかすとお坊様なら
どぉぉんと地獄行
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。