伝言昔話「化け蜘蛛」(小泉八雲より)
伝言昔話「化け蜘蛛」
古い書物に化け蜘蛛の話が書いてあります。
化け蜘蛛は昔いたのだとか、今もまだいるのだとか、様々に言います。
「化け蜘蛛の話をしよう」
男が語り始めました。
人里はなれた所にお化け寺がありました。
お堂にお化けがいついてしまい、人々がそのお堂をどうすればいいか、困っていました
力自慢や、変人がお堂に行きましたが、みな生きて帰ってこなかったのです。
その噂に胸をいためた侍がいました。
侍は度胸もあり、頭も剣の腕もよい優れた人でした。
その侍はそのお堂に行くことにしたのです。
「私が朝まで生きていたら、寺の鐘をならそう」
寺まで案内してくれた者にそう言って、侍はお堂に向かったのでした。
侍はほこりにまみれた須弥壇の下でお化けを待っていました。
「ヒトクサイ」
声がしました。
声の主は、体が半分の人でした。
侍がその化け物をかんさつしていると、化け物はどこかへ行ってしまいました。
「しまった、様子を見すぎたかな」
侍がそう言い、あわてて出ると、見事な三味線の音が聞こえました。
「この音色は人間のわざではないな」
侍はそう言うと、構えました。
いつからいたのでしょうか、一人の僧が三味線をひいていたのです。
僧は侍を見て、大きく笑いました。
「わしはここの住職だ。何も恐れる必要はないぞ」
僧が言うと、
「三味線のうでから考えれば、あなた良い僧ではないですね」
侍は僧に言いました。
「三味線は良いものです。ひいてみていかがかな」
僧がそう言って、侍に三味線を渡しました。
侍は気をつけて左手で受け取りましたが、受け取った三味線が蜘蛛の巣になり、侍にからまり、僧は化け蜘蛛になったのです。
「やはりか」
侍はそう言うと、右手で刀を握り、蜘蛛を切ったのです。
ぎゃぁぁぁ
蜘蛛は叫び逃げていきました。
そして、侍は蜘蛛の巣で動けなくなりました。
しばらくして、侍を心配した人たちがやってきて、蜘蛛の糸で動けない侍を見つけたのです。
侍たちは蜘蛛の流した血のあとたどっていくと、庭にある穴に蜘蛛がいました。
侍たちは皆でその雲を退治したのでした。
「これが蜘蛛につけられた傷」
腕にある傷を見せ、男の話が終わったのでした。
聞き伝える昔の話でございます
小泉八雲怪談集から。
怪談を書こう。
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。