伝聞昔話「平茸守」(今昔物語より)
伝聞昔話「平茸守」
昔、信濃守藤原陳忠という者がいました。
国の務めを終えて帰京する途中、御坂の途中で馬が足を踏み外し、守が谷に落ちてしまったのです。
谷は深く、谷の底は背の高い木の先の方のはるか下にあるようでした。
郎党たちは馬から下りて谷の底をのぞきましたが、
「下に降りる道がないので、一日歩いてふもとへ行った方が早いかもしれないな」
郎党たちはどうするか話していると、谷の底から声がしました。
「殿、ご無事ですか」
と郎党たちが声をかけました。
「旅籠に縄を付けておろせ」
と守の声が聞こえたのです。
郎党たちは旅籠に縄を付けて、それそれと下ろしました。
旅籠を下ろしていくと、籠が底についたのか、縄が少しゆるみました。
上げろと声がしたので、皆で旅籠を上げますが、妙に軽いのです。
「軽すぎないか」
一人の郎党が聞くと、
「枝などつかみ、軽くしてくれているのだ」
別の郎党が答えました。
旅籠が上がり、中を見ると、旅籠にはたくさんの平茸しかありませんでした。
「これはなんだ」
郎党たちは焦ります。
「生臭坊主は平茸になるという。我々に口うるさく言い、財をせこく貯めた殿だ。殿は谷に落ちた時に死に、最後の力できっと平茸になったのだろう」
郎党の一人が平茸を手に取り、涙ぐみ話したので皆は納得し、皆で旅籠に手を合わせたのでした。
「この平茸は食っていいのか。悪い毒じゃないのか」
郎党たちが好きかって話していますと、籠を下ろせと声がしました。
「あら、殿は生きていた。涙を損した」
郎党が言い、
「殿のために泣くから損をするのだ」
別の郎党が言います。
郎党たちはそう言うと、旅籠をもう一度下ろしました。
旅籠は今度は重く、旅籠を上げると、平茸を持った守が中に入っていました。
そして守は旅籠から出ると、
「谷の底にはまだ平茸があった。なんともったいない」
守はそう言い、悲しそうに谷底を見ていたのでした。
悲しそうな守の姿を見て郎党たちは笑ったのでした。
聞き伝える昔の話でございます
今昔物語から
こんな人がいたよって話。
お馬さんは谷で死にました。
それ書いたら守は生きてたんだって思ったので、
省きました。
どうせあげれないしね。
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。