伝聞昔話「老人外術を使う」(今昔物語より)
伝聞昔話「老人外術を使う」
七月ばかりのころです。
大和の国より多くの馬に瓜を乗せた下衆たちが京へ上っていました。
宇治の北、成らぬ柿の木と呼ばれる期の木陰で瓜の籠をおろし休んでいました。
籠から自分たちのための瓜を出し、食べたのでした。
すると、帷を帯で結い、平下駄に杖をついている老人がやってきたのです。
老人は下衆たちの傍らで扇を弱く仰ぎながら、瓜を食う下衆たちを見ていました。
「一つくれないか」
老人が頼むと、
「この瓜は売り物で、自分たちにはあげることが出来ない」
下衆が言いました。
「つれないな。老人を敬う気持ちを故郷に忘れたか、それとも金で売ったか、生まれる時に腹に忘れたか知らないが、敬う気持ちを持たないと後悔が多いぞ。そうだ、わしは今から瓜を育てて食べるとしよう」
老人はそう言うと、木の枝を取り、それで畑を耕し始めたのです。
その姿を下衆たちは笑いました。
老人は気にせず地ならしをします。
そして、老人は下衆たちが食い散らかした瓜の種を畑にまきました。
「老人は気が長いというが、あまり長く考えていると墓から実を眺めることになるぞ」
下衆たちはそう言って笑いました。
すると畑から芽が出たのです。
下衆たちは驚き、瓜をまるのみできるほど口を大きく開けて動けなくなりました。
「うりようりうり、うりとなれ。うりうりうりうり、とうりになれ」
老人が歌います。
芽は大きくなり、葉が茂り、花が咲き、花が枯れ、立派な実がなりました。
「あの術はなんだ、老人は神様なのか、それとも」
下衆たちは驚き、無礼なふるまいに後悔しました。
「瓜がなった」
老人は瓜を手に取り、笑いながら言いました。
老人は育った瓜を食い、下衆や道行く人にも分けたのでした。
「満足した」
老人はそう言うと、どこかへ行ったのでした。
下衆たちが出発しようと籠を持ち上げると、籠は何も入ってないように軽くなっています。
「あの老人は種から瓜を育てたのではなく、そう思わせる術を使い、瓜を盗んだのか」
下衆たちはそう言うと、とても悔しがりました。
そして、悲しそうに大和の国へ帰る下衆たちを人々は笑ったのでした。
聞き伝える昔の話でございます
今昔物語から
悪いお爺さんの話。
狐とかかもしれませんが。
ただお爺さんというだけで外術が使える可能性があるという。
魔境平安京。
平安とかの時代なんですよね。
江戸時代のかなり前です。
今、平山ロコウさんという人の怪談読んでるんですが、
買ったのは十年前ですかね、
75年の時をこえた幻の怪談と書いてあったので買ったのを積んでいたのですが、
最近読み始めたんですよ。
で、検索したら今絶版ですかね?
幻すぎませんかね?
中国の民話の殺伐さにはまりそうです。
人を食べる蚊っていやすぎる!!
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。