怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

「廃病院」

「廃病院」

 

春が終わり始めるころに、会社に研修を終えた新人という頼りなさを若さで必死に支えている花が咲きます。

彼の勤めるタクシー会社も新人が一つ二つと懸命に様々な風に耐えながら咲いていました。

「それでは田山病院に向かってください」そんな新人が彼に伝えました。

田山病院は廃病院ですが、なぜか定期的にタクシーに来て欲しいと電話が来ます。

新人はそれが廃病院からの電話だと知らずに受けるので、新人が入った時期になると田山病院の客からの呼び出しの電話を受けてしますのです。

彼は面白いと思い向かうことにしました。タクシーが病院が見えるところまで来ると、さっきの話は無視してくださいと気づいた者から連絡が来ました。

「廃病院で肝試しした人が待っているかもしれません」彼がそう言うと、固定電話だからそれはないと返事がありました。その言葉に彼は病院に着きました、お客様を探しますと答えて、無線を切ったのでした。

病院に入るとぬいぐるみを手に持った少女がいました。

「ここで見てて欲しい」少女が言うと少女の手に持ったぬいぐるみの顔が大きく歪んだのです。そして窓から患者たちが顔を見せました。そして、廃病院が燃え始めたのでした。病院から、あつい、たすけてなどの叫び声が聞こえます。そして、その少女は彼に抱きつき、燃え始めたのでした。

「みんなもえたの、もえたの。あつい。あつい」少女は燃えた体で叫びます。

そして、彼は、病院から逃げる男を見ました。

少女の火は彼に燃え移ることはありませんでした。病院の火は消えていましたが、叫び声が彼の耳に張り付くようにまだしっかりと聞こえています。彼がタクシーに戻ると、同じ会社のタクシーが来ました。

「万が一があるかもしれないからと言って来いと言われたよ」タクシーからさっき病院から逃げた男と同じ顔の男が出てきたのでした。

 

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文体診断ロゴーン

 

森鴎外さん、阿刀田高さん、宮沢賢治さん。

 

わざわざこのブログに来て下さった貴方を私は勝手に大切に思います。