伝聞昔話「後の千金」(宇治拾遺物語より)
伝聞昔話「後の千金」
荘子は腹が減っていました。
昔、唐土に暮らす荘子は、家がひどく貧しく、今日の食料もなかったのです。
荘子は隣に住む監河候に今日の分の粟を乞うたのです。
監河候は、
「いい天気ですね、花がきれいに咲いています。きれいに咲く花を見ると、今が極楽だと思いますが、その感情が井の中の蛙大海を知らずと言うのでしょうかね」
笑顔で荘子に言ったのです。
「腹が減りました、今日の粟をいただきたい」
荘子は監河候に頼みました。
「千両の金が五日後に入ります、五日後にいらして下さい、それを差し上げますよ。あなたのような立派な方が粟など食う必要はないのですよ。あなたのような立派な方に粟を渡すと恥になります」
荘子にそう言ったのです。
その言葉を聞き、荘子は監河候に昨日の話をしました。
荘子が道を歩いていると、後ろから呼ばれました。
荘子が振り返ってもだれもいません。
その声の主は、轍に溜まった水の中でぴちぴちと跳ねている鮒でした。
「私は河伯神の使いで、江湖へ行く所です。しかし飛び跳ねるのに失敗して、この溝に落ちてしまったのです。のどが渇いて死にそうなのです。どうかお助け下さい」
鮒は荘子に助けを求めました。
「私は二日後に江湖に遊びに行く、その時にでも助けよう」
荘子は言いました。
「それまではとても待てません、堤一杯の水で今のどの渇きを潤さないといけません」
鮒は言いました。
荘子は監河候に、
「今その鮒の気持ちがよく分かる。今日の命は今日の粟でつなぐのだ。後の千金など無益である」
荘子のその言葉で後の千金という言葉が知られるようになったのでした。
聞き伝える昔の話でございます
宇治拾遺物語から
宇治拾遺物語では言葉から来てる話は少ないですね。
わざわざこのブログに来て下さったあなたを、私は大切に思います。
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。