怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

天狗娘

  「天狗娘」

 

 天狗がおりました。

 その天狗は村の娘と約束をしていました。

 村を悪い事から守るという約束をしていたのです。

 その村はいつも悪い病気や嵐などの人の力ではどうしようもない事に悩んでいました。

村を守るためには力が必要です。天狗だからと何でも自由にすることはできないのです。

 村を守る力のために天狗は時々白羽の矢を立て、選んだ村人を食いました。

 天狗は嵐や病気から村を守っていたのですが、村人にはそんなことは分かりません。

 村人が知っていることは、天狗は人を食う、それだけです。

 天狗に我慢できなくなった村人は若者を天狗のもとへ行かせました。

「天狗様、お願いですから村人を食べるのをやめてください」

 村人の願いに、

「娘と約束したのでそれはできぬ」

 天狗はそう一言言って飛んで行ったのでした。

 若者は怒りました。

「娘が天狗に村人を食わせている」

 若者の言葉に村人は取りつかれたのです。

 村人達は武器を手に取り娘の家に向かいました。

 天狗はその姿を見て悲しみました。

 村人は娘の家の前に集まりました。

「でてこい、天狗の娘出てこい」

 若者はそう叫びました。

「ゆるさぬ、ゆるさぬ。天狗の娘ゆるさぬ」

「ころせ、ころせ娘をころせ」

 村人達は怒りのままに叫んだのでした。

 娘の家の前で村人達が叫んでいると、娘の家の戸が開きました。

 娘を抱きかかえた天狗が出てきたのです。

「かなしいことだ、かなしいことだ」

 天狗は涙を流しながらそう言うと、娘と共に飛んで行ったのでした。

 そして村は悪い病気に襲われました。

 多くの村人が苦しみました。

 すべてを流すように嵐が来て、村をきれいに流してしまったのです。