怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

おにぼうず

  おにぼうず

 

 荒れた小さいお寺が山の上にありました。

 そこの寺はお坊様がすぐにいなくなる寺でした。

 山には鬼がいるからその鬼に食われたのだろうと人々は言っていました。

 その寺には今は誰もいなかったので一人のお坊様がやって来たのです。

 月がきれいな夜です。

 お坊様の所に鬼が来ました。

「坊主食う。百人食う。村もらう」

 鬼は嬉しそうに坊主に語りました。

「お前さんは何人食ったのだ」

 お坊様の問いに、

「あと一人、あと一人。お前で終わり」

 鬼は嬉しそうに言うと帰っていったのでした。

 お坊様は困りました、鬼に食われるのも困りますし、食われたら山の下の村が鬼のものになるというのも不気味な話です。

 お坊様は何日も考えましたが、いい考えは浮かんできません。

 毎晩鬼が嬉しそうにお坊様の顔を見に来ていました。

「お前で終わり、お前で終わり。」

 そう言うと帰っていったのです。

 お坊様は夢を見ました。

 山の上にきれいな小さいお寺がありました。

 そこには尊いお坊様がいました。

 山の下には村がありました。

 そして村は山賊に襲われました。

 尊いお坊様が刀を手に取り叫びながら山賊に切りかかっていくのを見たのです。

 お坊様は鬼になり山賊を食いそして山に走っていきました。

 その鬼は毎晩くる鬼でした。

 お坊様は目を覚まし、そして瞑想を始めました。

 飲まず食わず眠らずお坊様は瞑想したのです。

「お前さん何している」

 鬼がお坊様に聞きますが、お坊様は答えません。

 一日、二日、三日とお坊様は瞑想を続けました。

 四日目の晩です、鬼はお坊様の前に座りました。

 五日、六日、七日とお坊様と鬼は共に動きませんでした。

 そして百日を数えたときお坊様は死にました。

鬼はお坊様を食べました。

 鬼は泣きました。

 おんおんと、

百日泣きました。

 鬼は石になりました。

 偉いお坊様がその石でお地蔵様を彫ったのでした。