怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

わが子人形

  わが子人形

 

 男には妻と子供がいました。

 男は出世がしたかったので、妻と子をおいて、生まれた小さな島を出たのです。

 一人で勝手に海をこえていった男を妻はうらみました。子は男をのろいました。

 妻は子に似た人形を作り、その人形のお腹にあなたの子ですとほったのでした。

 妻は人形を海に投げました。

 男は遠くの地で出世しました。

 ある日のことです、男が海に行きますと人形を見つけました。

 男が人形に近づきますと、

「あなたの子です、あなたの子です」

 と人形は捨てた妻の声で叫びお腹のあなたの子ですという文字を男に見せたのでした。

 男はその文字はたしかにあの妻の文字だと思いました。

 そして男は人形と暮らすことにしたのでした。

 人形は男にうひゃうひゃ笑いながら妻と子の話を男にしました。

 人形は人のように物を食べ眠り大きくなりました。

 きみの悪い人形です。

 ただただ、きみの悪い人形です。

 男はその人形にわが子と名付けました。

 なぜそのような奇妙な名前を付けたかというと、捨てたとはいえ妻が男のために作ったわが子だからです。

 男はその人形と暮らすことが罪を軽くするとあほうなことも考えていたのです。

「お前さんには何かしたいことがあるのかね」

 男がわが子に聞きました。

「あなた様をお母さまと私の所へ連れていきたいのです」

 わが子はそう答えました。

「そのためにいっぱい飯を食べ、大きくなるのです」

 わが子そう言うとはうひゃひゃと笑ったのでした。

 男はうひゃうひゃ笑うわが子をいっそう恐ろしく思ったのでした。

 ある日のことです、

「お母さまが病気になりました、あなたを連れていきたいのですがいいでしょうか」

 わが子は男に聞きました。

 男は考えました。

 そして男は自分が妻や子をおいていったことをずっと悪く思っていたので。

「あぁかまわないよ」

 男がそう言うと。

「私はまだ非力ですので一回では運べません、なのでまずは頭から運ぼうと思います」

 そう言うとわが子は男の頭をつかんだのでした。