怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

かおなしのカククさま

  かおなしのカククさま

 

 顔のないカクク様と呼ばれているお地蔵様がいました。

 そのお地蔵様を村の子供たちは遊び道具にしていました。

 カクク様は子供たちに川へ投げられ、道を引きずり回されなどしたので、顔がけずれてなくなったのです。

 人々は地蔵様をかおなしのカクク様と呼んだのでした。

 長者の家にむこに来たまじめな男がいました。

 その男はカクク様を見て、

「お地蔵様になんということを、悪いことがおこってします」

 男はカクク様にお堂を作ったのでした。

 それからです。

 男は病気になりました。

 男はカクク様にお堂を作らなかったら損でいたのだろうと思い、カクク様に手を合わせ感謝したのです。

 病気の体でカクク様に何日も手を合わせましたが、体は少しずつ悪くなっていきました。

「カクク様のおかげで毎日手を合わせ感謝できる。お堂を作るのが少し遅かったらと思うと本当に恐ろしい」

 男はカクク様に感謝しました。

 それからです。

「おどうおどう」

 という声を男は聞くようになりました。

 しばらくして、家の者もその声を聞くようになったのです。

「おどうおどう」

 その声に男は喜び、家の者は恐怖したのです。

 ある日の事です。

「宿りたい」

 お坊様が家に泊めてくれと男の家に来たのです。

 お坊様は返事を聞かずに家に入っていきました。

 そして男が寝ている部屋に入っていきました。

「カクク様というお地蔵様に言われてな、お堂をこわせ、子供と遊ばせろとお前さんに言えと」

 お坊様は男につたえ、酒と魚をたくさん食べ、次の日に出ていきました。

 男はお坊様の言葉をばかばかしいと聞きませんでした。

「おどうおどう」

 不思議な声は止まりません。

 ある雨の強い晩です。

 五人の笠をかぶったお坊様が男の家に来ました。

 五人のお坊様はよく見ると顔がありません。

 五人のお坊様は蔵のかぎを不思議な力で開け、中の物を村の者に分けたのです。

 雨は強くなり、雷がカクク様のお堂と男の家に落ちました。

 男の家は燃えてなくなったのでした。

 顔のないカクク様と呼ばれているお地蔵様がいました。

 カクク様は子供たちに川へ投げられ、道を引きずり回されなどしたので、顔がけずれてありません。