怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

赤い器

  赤い器

 

 金の好きな男が好ましく思っている女の家に通っていました。

 男は女の家でのんびり昼寝をしていました。

 家の中が騒がしかったので男は目を覚ましました。

 家の中に鬼がいて、女と女の家族に何かを飲ませていました。

 女たちは大きな赤い器を手に持っていました。

 鬼がその赤い器にとかした金を注ぎました。

 女たちはひぃひぃと涙をぼろぼろと流しながら赤い器に注がれた金をごぉくりごぉくりと飲んでいました。

 男はその光景を見て声が出ませんでした。

 恐怖で動けない男に鬼が気付きました。

「こっちへ来い。お前が好きな金をたっぷりやろう」

 鬼が笑いながら男に言いました。

 そして、一つ目の娘が男に金の入った赤い器を持ってきたのです。

「これが、あなた様に差し上げる金です」

 一つ目の娘はにやにや笑いながら言いました。

「お体の調子が悪いのかな。飲ませてあげましょう」

 一つ目の娘が男に金を飲ませました。

 男の体に熱いものが注がれていきます。

「あぁ」

 男は声になっていない声で呻き、目を覚ましたのです。

 男は目をさましました。

「どうかしましたか」

 女は赤い器を持って男の方へ来ました。

 その赤い器を見て、男は滝のように汗を流しました。

「その赤い器はどうした」

 男は情けない声で聞きます。

「鬼からもらったのです。器に金が入っています」

 娘の返事を聞くと、男は身を投げるように逃げ出したのでした。

 男は逃げているときに犬に会いました。

 犬はにやりと笑い、

「マヨッタ、マヨイコンダ。マヨッタ、マヨイコンダ」

 そう犬は男を見て大声で笑ったのでした。