伝聞昔話「子捨て」(小泉八雲より)
伝聞昔話「子捨て」
その百姓はとても貧しかったのです。
自分たちが食べていくだけでいっぱいでした。
女房が子供を産みました。
捨てました。
女房と自分の子を川に捨てました。
貧しかったので、女房が産むたびに川に捨てました。
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「黄昏の人」
黄昏時にその人がやってきます。
昼と夜が混ざる時、色々と迷っている子供に、本当の家にこないかい。本当の国にこないかいと、その人は誘うのです。
「君は賢いから知っているだろう。こんなつまらない世界が君の世界でないことを。私と一緒に正しい君の世界へ行こうじゃないか」
その人は言います。子供にやさしく語るのです。
本当の世界と彼が言った、無責任な夢の国の話を。
責任とは地に付くための重力です。その国は無責任で無重力のふわふわとした国。
もちろんそんな国はありません。
黄昏時にその人と手をつないだ子供。その人と手をつないだ昼の子供は、その人と一緒に夜の国へ行きます。昼の国から夜の国へと行くのです。
その子は夜の住人になるのです。
怖い怖い夜の国の住人に。
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「鬼と猟師と犬」
「鬼と猟師と犬」
山で年老いた猟師が鬼の子供を見つけました。その鬼の子供は猟犬にふるえ、たすけてくださいと繰り返しました。猟師は鬼の子供に子供は殺さないのが猟師だと言いました。鬼の子供はその猟師の後をついて行きました。
猟師は邪魔するなよと、一言いって、鬼の子供は頷きました。
鬼の子供は猟師の家までついて行き、そのまま暮らしました。鬼の子供は真面目に猟師を手伝い、親子のように過ごしました。猟師を父様と鬼は呼び、猟師は鬼にかすけと名付けたのでした。かすけは立派な猟師となりました。
父様は年老いていたので、かすけと犬を残して死にました。かすけは父様の墓を作り犬と毎日手を合わせたのでした。
かすけが猟師と一緒に上手く里で暮らせたのは、猟師が尊敬され、畏れられていたからです。猟師が死んでから里の者たちはかすけを厄介者として扱うようになりました。里の者たちはかすけが怖かったのです。
人でない鬼が怖かったのです。
「お前は人を食わない鬼だと証明できるのか」里の者がかすけに聞きました。
「大切な人は食わない。それだけだ」かすけは子供を残して里の大人を皆食べました。そして、犬と共に山に入っていったのでした。奥へ奥へと。
犬と一緒にお爺さんの思い出と意志を抱いて。
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「枕」
「枕」
変わった枕を骨董屋で買いました。
夢占いでは殺される夢は生まれ変わりを意味し、悩みごとが解決するいい夢だといます。
夢は個人に与えられた物なので、創作のために夢の日記をつける画家や小説家は多く、ついでに夢占いをする人もいるといいます。
その骨董屋で買った枕は運がよくなる殺される夢が見やすくなるというのです。
殺される夢は買ったその晩から見ることが出来ました。
私は夢の中で磔にされており、のこぎりを持った赤いエプロンをつけた女が私をにやにやと見ていました。そして、その女はのこぎりで私の右腕をぎいこぎいこと切り始めたのです。その痛みはすさまじく、私は汗をまき散らし泣き叫びました。
「まずは右腕」その女は私の切り取られた腕を手に持ち笑いながら言いました。
目が覚めると右腕に違和感がありましたが、右腕が軽くなった気がしました。ただ、右腕がなんかほっそりしている気がします。一週間後にまた夢を見ました。そして、前と同じように左腕を切り取ったのでした。そして、右足、左足と一週間ごとに取り換えられていったのです。左足を切り取られているとき、私は雑に置かれた切り取られた両手と右足、そして、台に置かれた体を見ました。その台にはこれから付けられる左足と、胴体と見覚えがあるようなないような頭が置いてありました。
体を取り換える時は何回切られるのでしょうか。両手両足をまた切られるのでしょうか。あの痛みを4回は耐えられそうもありません。そして、また夢を見ました。
「今日は胴体だから両手両足と頭で5回だね。痛いよ」女は私にそう言ったのでした。
私は病院で目を覚ましました。5週間目を覚まさなかったそうです。私は不思議な夢を見ていました。その夢では私は台に乗っており、私の右手、左手、右足、左足、胴体、頭と順番に磔にされた男の人に変えられていく夢でした。私の右腕は切り取られ、男に私の右腕がつけられたのでした。男の人は切られるときに汗をまき散らし、泣き叫んでいました。
「なじむのに1週間かかるから全部取り換えるのに5週間かかる」赤いエプロンをつけた女性はそう言ったのです。取り換えられた体はこれはいらないからと雑に投げ捨てられました。そして、その男性の頭が投げ捨てられ、私の頭が私の頭に乗っかった時に私は目が覚めたのでした。
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