怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

自由記述帖

鹿の革

鹿の革 鹿の革をかぶった男がいました。 男は名をニカンというお坊様でした。 ニカンは鹿の革をかぶって弓で射られようとしていたのです。 カツキという男がいました。 その男は猟の才能があり、必要とする以上に狩りをしていました。 照射と書いてともしと…

うけけ様

うけけ様 うけけ様が笑えば金持ちになる、うけけ様が笑えば神通力が手に入る、うけけ様は金のうんちをする。 山の上にいるうけけ様と呼ばれるお地蔵様にはいろんな噂がありました。 うけけ様のいる場所は山の上なので夏でも涼しく暑さにたえられなかった者が…

けけけ尼

けけけ尼 えらいお坊様とは欲を自分からはなすことができた者だと言います。 女性と一度も会わないために生まれてから一度もお寺から出なかったお坊様もいたそうです。 そのお坊様はお米を麦を一度も食べたことがありませんでした。 葉や根っこを食べて修行…

くろくち

くろくち ウツキという名の男が夢を見ました。 その夢は変わった夢だったので、蕎麦屋で隣にいた老人に話しました。 老人はその夢を蕎麦一杯で買いました。 「いい物を買った」 そう言うと、老人は鬼になりました。 そして、鬼は飛んでいきました。 それから…

思いが鬼

思いが鬼 言葉には力があります。 それを言霊といいます。 言葉に力があるのは、言葉につよい思いがあるからです。 月があやしい夜の話です。 男が歩いていると、青い着物を着た女がうろうろとしているのを見ました。 こんな時間におかしいと男は思いました…

赤い鹿

赤い鹿 宝玉のように美しい赤い鹿がいました。 その鹿は人を恐れ、山の深い所で暮らしていました。 ある日、鹿は革でおぼれている人間を助けました。 「ご恩にたいしてお返しがしたいのです。何がお望みですか」 男が言うと、 「私のことを話さないでくださ…

箱の中

箱の中 お坊様が橋の途中で、箱を手に持った美しい青い着物を着た女に会いました。 「お坊様、この箱を隣町の橋にいる女に渡して欲しいのです。隣町へご用事があるでしょう。そのついでで構いません」 女はお坊様に言いました。 お坊様はその言葉を怪しいと…

三枚の絵

三枚の絵 三人の画家がいました。 その画家たちは三人で評判のいい人の絵を描く旅をしていたのです。 名前を、ソウカ、レンク、バトクと言いました。 皆、習った先生は違いましたがとても評判の良い画家でした。 形を正確に伝えるために、三人で絵を描き、三…

赤い器

赤い器 金の好きな男が好ましく思っている女の家に通っていました。 男は女の家でのんびり昼寝をしていました。 家の中が騒がしかったので男は目を覚ましました。 家の中に鬼がいて、女と女の家族に何かを飲ませていました。 女たちは大きな赤い器を手に持っ…

140字小説「ハロウィンのお客様」

今週のお題「ハロウィン」 140字小説「ハロウィンのお客様」 ハロウィンの日、お菓子を用意して待っていますと書いた看板を用意する。 すると、トリックオアトリート!と子どもに化けた狐、狸、猫がやってくるという。 だからハロウィンのお菓子はバター…

かおなしのカククさま

かおなしのカククさま 顔のないカクク様と呼ばれているお地蔵様がいました。 そのお地蔵様を村の子供たちは遊び道具にしていました。 カクク様は子供たちに川へ投げられ、道を引きずり回されなどしたので、顔がけずれてなくなったのです。 人々は地蔵様をか…

尼様の木

尼様の木 穀断ちという、お米や麦などの穀物を食べない修行をしている美しい尼様がいました。 ある晩です。 尼様の前に白い亀にのった七つの顔を持つ仏様があらわれました。 仏様は心地の良い光や花を空中におどらせていました。 「あなたのような姿の仏様は…

わが子人形

わが子人形 男には妻と子供がいました。 男は出世がしたかったので、妻と子をおいて、生まれた小さな島を出たのです。 一人で勝手に海をこえていった男を妻はうらみました。子は男をのろいました。 妻は子に似た人形を作り、その人形のお腹にあなたの子です…

おに雪

おに雪 おに雪という美しい尼がいました。 その尼はある村で一晩男の家にとまりました。 「あなたはとても美しい、もし、できるのならば私の妻になってくれませんか。一人では何かと不便なのです。助けると思って妻になっていただきたいのです」 男はおに雪…

きばかんのん

きばかんのん 猟師は山で見つけた千手観音の手の数をぼけぇと数えていました。 その猟師はとても腕がよく、共に猟に出ている猟犬もとても良い犬だったので猟はいつも成功するため獲物を保管する小屋はいつもいっぱいでした、なのでいつも暇だったのです。 そ…

おにぼうず

おにぼうず 荒れた小さいお寺が山の上にありました。 そこの寺はお坊様がすぐにいなくなる寺でした。 山には鬼がいるからその鬼に食われたのだろうと人々は言っていました。 その寺には今は誰もいなかったので一人のお坊様がやって来たのです。 月がきれいな…

子供の顔のにわとり

子供の顔のにわとり ヤイチというひどい山賊がいました。 ヤイチは山に来た物を殺し、物をうばったのです。 殺された者の中には子供もたくさんいました。 ヤイチは頭が良かったので、うばった金で商売を始めたのでした。 商売は上手くいきました。 そして孫…

仙人香

仙人香 竜のよだれのお香で龍涎香といいます。 龍涎香は鯨が消化しきれなかったイカなどが石となり、それを出したものです。 そのようなものなので、龍涎香は鯨が出したものを拾うのがふつうです。 とても貴重なお香です。 お香を売るその店にはたくさんの龍…

おいしいね君

おいしいね君 けんたはニンジンが大嫌いです。 机には けんたへ 母さんは今日用事があるので、 ハンバーグを作っておいたから食べてください。 ニンジンもちゃんと食べてください。 母より と書かれた手紙がありました。 けんたはニンジンとにらみあいをして…

天狗娘

「天狗娘」 天狗がおりました。 その天狗は村の娘と約束をしていました。 村を悪い事から守るという約束をしていたのです。 その村はいつも悪い病気や嵐などの人の力ではどうしようもない事に悩んでいました。 村を守るためには力が必要です。天狗だからと何…

首切りみやらび

首切りみやらび 美しい少女が長い髪をふりふり歌を歌います。 はやく かねだせ おまえさま ださなきゃ はさみで ちょんぎるぞ 美しい少女が長い髪をふりふり歌を歌います。 手をふり、足をふり、髪をふり、くるくるおどります。 その姿を見た人々はやんやや…

けろりけろりぱっくんちょ

けろりけろりぱっくんちょ けろりけろりぱっくんちょ 机の上にカエルがいました。 けろりけろりぱっくんちょ 腹に傷のあるカエルはそう鳴いていました。 そのカエルが少年の鼻の穴から出てきたことです。 けろりけろりぱっくんちょ それはきのうから始まった…

140字小説「100円の表彰状」

140字小説「100円の表彰状」 五歳の彼は欲しい物は母親にねだる物でした。 欲しい欲しいと叫べば4割の確率で手に入る物です。欲しいものが手に入る確率は値段で変動するのですが、彼にはそれはまだ分かりません。 母親の手伝いをして手に入れた百円玉…

140字小説「麦茶のボトル戦争(日常は戦場)」

140字小説「麦茶のボトル戦争(日常は戦場)」 母親と喧嘩した。麦茶のボトルを1リットルか3リットルかでもめたのだ。私は3リットル欲しかったのだ。 猫の欠伸がつきたころ。1リットル2本という答えになった。そして、事件が起きる。開店セールでオ…

140字小説「ミネストローネ」

140字小説「ミネストローネ」 ミネストローネには細かく切った野菜がいい。 細かく切った野菜をしっかり煮込み、 それをスプーンに乗せてわしわしと食べるのだ。 スープは汁ではない。 スープはおかずである。 化け猫になった猫が眠る前に語った話である…

140字小説「猫の温度計」

140字小説「猫の温度計」 猫の温度計。 寒いと丸くなる。 もっと寒いと布団の中に隠れる。 温かくなると、猫の温度計はぐいんと伸びる。 大の字に伸びる。 それより熱くなると、ひんやりとした所に逃げる。 規則的にお腹が減るので、 鳩時計のように、飯…

140字小説「ポトフ(日常は戦場)」

140字小説「ポトフ(日常は戦場)」 ポトフとは洋風煮込みである。野菜とベーコンを煮込むシンプルな料理だ。問題はどう煮込むか。母は塩だけでと言う。それでは味気ない。コンソメを入れるべきと言ったら、喧嘩になった。私と母が喧嘩をしていると、父が…

「廃病院」

「廃病院」 春が終わり始めるころに、会社に研修を終えた新人という頼りなさを若さで必死に支えている花が咲きます。 彼の勤めるタクシー会社も新人が一つ二つと懸命に様々な風に耐えながら咲いていました。 「それでは田山病院に向かってください」そんな新…

「ハローさん」

「ハローさん」 友人とハローさんという降霊術をやることになりました。 やり方は、赤い糸を巻き付けたパンに赤ワインを染み込ませて、そのパンをぬいぐるみに入れるのです。 甦らせたい人がいればその人の体の一部を入れたら甦るそうです。 甦るのならそれ…

「黄昏の人」

「黄昏の人」 黄昏時にその人がやってきます。 昼と夜が混ざる時、色々と迷っている子供に、本当の家にこないかい。本当の国にこないかいと、その人は誘うのです。 「君は賢いから知っているだろう。こんなつまらない世界が君の世界でないことを。私と一緒に…