怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

尼様の木

  尼様の木

 

 穀断ちという、お米や麦などの穀物を食べない修行をしている美しい尼様がいました。

 ある晩です。

 尼様の前に白い亀にのった七つの顔を持つ仏様があらわれました。

 仏様は心地の良い光や花を空中におどらせていました。

「あなたのような姿の仏様は聞いたことがありません」

 尼様が仏様に聞きます。

「お前は知らぬことの方が多いだろう」

 仏様はそう答えました。

 尼様はその答えに感動しました。

「浄土の門を通るには三蔵をそらんじることが必要である」

 仏様は言いました。

 そして、仏さまは経蔵、律蔵、論蔵という三つをすらすらと何も見ずに読まれたのでした。

 尼様はその姿に感動しました。

 仏様は尼様に経蔵、律蔵、論蔵の三つの本をわたし、千日後に来ると伝えたのでした。

 尼様は一途に読みました。

 千日かけて、本がなくても、まるで本があるように読めるようになりました。

 千日後、尼様は体をきれいにして、仏様を持ったのです。

 光と花がおどる姿を尼様は見ました。

 そして、仏様があらわれたのです。

 尼様は仏様と供に浄土に向かう姿を多くの僧が見ました。

 しばらくして、山に木を集めに行った僧たちが木にしばられている尼様を見つけました。

 尼様はなにかを唱えていました。

 仏様にわたされた三つの本を尼様は唱えていたのです。

 僧はいそいで尼様をすくいました。

「ハナセハナセ、ここで仏様を待つのだ」

 尼様は暴れます。

「ブレイモノブレイモノ」

 尼様は叫びました。

 そして、尼様の口が大きくさけたのです。

 尼様は助けた僧たちを食べ、かきの木になったのでした。

 その木はたくさんの立派な実をつけました。

 そして、一匹の狸がきて、その実をうれしそうに取っていったのでした。