怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

きばかんのん

  きばかんのん

 

 猟師は山で見つけた千手観音の手の数をぼけぇと数えていました。

 その猟師はとても腕がよく、共に猟に出ている猟犬もとても良い犬だったので猟はいつも成功するため獲物を保管する小屋はいつもいっぱいでした、なのでいつも暇だったのです。

 その日も猟師は山が好きだったのでなんのあてもなく猟犬と共に山で過ごしていました。

 そのような時に千手観音を見つけたので本当に手が千本あるのか数えていたのです。

 ただ千という数は果てしない数でもあるので、欠伸したりどこまで数えたか分からなくなったりで最初から数えなおすことを何度もくり返していたのです。

 猟犬の欠伸が百を数えるころです。

 観音様が大きく口を開けました。

 その口には恐ろしい牙が無数に生えていたのです。

 そしてたくさんある手をおもいおもいに伸ばしました。

 もどってきた観音の手にはリスや魚に鳥、そして猪までもが捕らえられていました。

 観音は捕まえた獲物をその牙で食ったのです。

「やはり物の怪であったか」

 猟師は銃をかまえました。

 山で観音を見たときに自分に見えるのだからよほどすごい観音様かただの物の怪か、どちらにしてもこの観音は山には似合っていないと思い、猟犬と共に後をつけていたのです。

 観音を撃とうとしたその時です。

 観音は猟師の方をみて恐ろしく笑いました。

 そして猟師たちの方に歩いてきたのです。

「にげよう」

 猟師はえたいの知れぬものにはかなわないと思い逃げることにしたのです。

 観音は歩いているように見えましたが、その速さはまるで猪が駆けるようです、このままでは追いつかれてしまうと思ったときです。

 わんわん

猟犬は観音にむかっていこうとしました。

「いくな、いってはならん、これは猟ではないのだから私にまかせなさい」

 猟師はそう言うと猟犬の前に立ち銃を観音に撃ったのです。

 ぱんぱん

という銃声の後、

 ぎゃあああああああ

 観音は恐ろしい声で叫びました。

 猟師たちはその叫び声を聞きながら必死に逃げたのでした。

そしてなんとか逃げ切った猟師たちはしばらく猟を休んだのでした。

 数日後、観音がいた場所には猪や魚に鳥等の骨と共に銃に撃たれたとても大きなムカデの死体があったのを猟師は見たのでした。