怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

「鬼と猟師と犬」

「鬼と猟師と犬」

 

山で年老いた猟師が鬼の子供を見つけました。その鬼の子供は猟犬にふるえ、たすけてくださいと繰り返しました。猟師は鬼の子供に子供は殺さないのが猟師だと言いました。鬼の子供はその猟師の後をついて行きました。

 

猟師は邪魔するなよと、一言いって、鬼の子供は頷きました。

鬼の子供は猟師の家までついて行き、そのまま暮らしました。鬼の子供は真面目に猟師を手伝い、親子のように過ごしました。猟師を父様と鬼は呼び、猟師は鬼にかすけと名付けたのでした。かすけは立派な猟師となりました。

 

父様は年老いていたので、かすけと犬を残して死にました。かすけは父様の墓を作り犬と毎日手を合わせたのでした。

 

かすけが猟師と一緒に上手く里で暮らせたのは、猟師が尊敬され、畏れられていたからです。猟師が死んでから里の者たちはかすけを厄介者として扱うようになりました。里の者たちはかすけが怖かったのです。

人でない鬼が怖かったのです。

「お前は人を食わない鬼だと証明できるのか」里の者がかすけに聞きました。

「大切な人は食わない。それだけだ」かすけは子供を残して里の大人を皆食べました。そして、犬と共に山に入っていったのでした。奥へ奥へと。

犬と一緒にお爺さんの思い出と意志を抱いて。

 

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文体診断ロゴーン

坂口安吾さん、井上ひさしさん、梅原猛さん。

 

わざわざこのブログに来て下さった貴方を私は勝手に大切に思います。