伝聞昔話「仮名暦あつらへたる」(宇治拾遺物語より)
伝聞昔話「仮名暦あつらへたる」
昔、なま女房がおりました。
その女は苦しんでいました。
尻を押さえ苦しんでいました。
始まりは、女が同じ屋敷に住む僧にもらった紙に仮名書きの暦を頼んだからです。
僧はお安い御用ですといって暦を書きました。
初めはきちんと、かみほとけによし、、凶会日に、外出や種まきにむかない坎日とまじめに書いていました。
僧は途中で飽きました。
ある物食わぬ日や、これぞあればよく食う日など適当になっていったのです。
女は変な暦だと思ったが受け取りました。
僧のように頭のいい人は私が想像しないことも知っていると感心したのでした。
暦の通りに女は過ごしました。
ある日の暦に、はこすべからずと書いてありました。
「糞をするなとは珍しい暦だ」
女は不思議に思い、そして苦しみましたがその通りにしました。
暦を見ると次の日も、はこすべからずと書いてありました。
それは、長凶会日のように、はこすべからず、はこすべからずと続けて書いてありました。
女は青くなりました。
「お腹がもつだろうか」
女は暦を見て、腹をおさえながらつぶやきました。
二日目、祈りながら過ごしました。
尻を押さえ祈りながら過ごしました。
次の日です。
その日も、はこすべからずと書いてありました。
女は苦しみました。
尻を押さえ苦しみました。
「どうしようどうしよう、あぁどうしよう」
女は尻を押さえ呻きました。
悲しいことに人には限界があるのです。
そして女は涙を流したのです。
おもしろい
聞き伝える昔の話でございます
宇治拾遺物語から
伝えたい日本の昔話
ふふふ
書き直しました。
なま女房が仕事に慣れない女官だそうで、いろいろ直してみました。
※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。