怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

伝聞昔話「夢童」(宇治拾遺物語より)

    伝聞昔話「夢童」

 

 堀川太政大臣兼道公という人が重い流行り病にかかりました。

 名の通った僧は皆祈祷しましたが、殿の体は良くなりませんでした。

 極楽寺はその殿が作った寺です。

 混乱しているからでしょうか、極楽寺の者は誰も祈祷に呼ばれなかったのです。

 

極楽寺があるのは殿があるからだ。呼ばれなかったからと行かないのは恩に背くことになる。呼ばれなくても行かねばならない」

 と極楽寺のある僧は思い、殿のもとへ仁王経を持ち行ったのでした。

 騒がしかったので北の廊の隅の方で屈み、一途に仁王経を読み奉ったのです。

 

 殿は夢を見ました。

 殿は恐ろしい鬼に責められていました。

「誰か助けてくれ。誰かこの鬼をどうにかしてくれ。この鬼に罰を与えてくれ」

 殿は無茶苦茶に祈りましたが何も効果がありません。

 取り乱し、無茶苦茶に祈る殿を見て鬼たちは笑います。

 

 すると、経が聞こえてきました。

「何か聞こえるな。僧どもが経を読んでいるな。蚊のようにうっとうしい」

 鬼たちはそう言い、嫌な顔をしましたが効果はないようでした。

「ふふふ」

 笑い声がしました。

 びずらを結い、すわえを持った童が鬼と殿の前に立っていたのです。

 

「なんだ、お前はどこから来たのだ」

 鬼が驚き、童に聞きます。

極楽寺から来た。殿をお救いするために来たのだ」

 童はそう言うと、手に持ったすわえで鬼たちを打ち払いました。

鬼たちは、これはたまらんと逃げて行ったのでした。

 

 殿は童に深く感謝して目を覚ましました。

極楽寺の僧を呼べ」

 殿はそう言うと、極楽寺の僧を呼んだのです。

「祈りが童となり私を鬼から救った」

 殿は僧に感謝して、棹にかかっていた御衣を僧に与えたのでした。

 僧は華やかに見送られ、極楽寺に帰ったのでした。

 祈りとは僧の名で祈るのではなく、母のように心をこめて祈るのが本当の祈りなのです。

 

聞き伝える昔の話でございます

 

 

宇治拾遺物語から。

子供が出てくる話っていいですよね。

昔話って感じで。

名僧ってお話だと奇人が多い気がします。

なぜでしょう?

 

今日すごい地震がありましたね。

安全、命を第一に行動してくださいね。

 

 

※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。