怪談「徒然草子」

徒然なるままに、きいぼうどと心にまかせて、古典狂の怪談童話創作家の結果的にここだけの怪しいかもしれない話

伝聞昔話「秦始皇帝天竺より自ら来る僧禁獄」(宇治拾遺物語より)

  伝聞昔話「秦始皇帝天竺より自ら来る僧禁獄」

 

 秦の始皇帝の時代の話です。
 天竺から僧が渡ってきました。
「お前は何者だ、何をしに来たのだ」
 帝はその僧を怪しんだのです。
「私は釈迦牟尼仏の御弟子です。遥か西天より渡ってきたのです」
 僧が答えました。

 


「お前の姿は怪しい。頭は禿げ、衣も人と違う。仏の弟子と名乗るが、仏とは何者か」
 帝は怒り、牢獄にとじこめよと命じたのでした。
 そして、これから怪しい者がいたら厳重に閉じこめよと、そして、きつく縛れと宣旨を出したのでした。
 僧は重罪の者たちと同じようにつながれました。


「あんた誰だい」
 同じようにつながれた盗賊が聞きます。
「私は僧だ。この国に仏の教えを伝えるために来た」
 僧は答えました。
「仏の教えを伝えると、俺たちのようにつなげられるのかい。良い教えだね」
 盗賊が笑います。
尊い良い教えです」
 僧は微笑みました。
 そして、僧は一緒に捕らえられた者達に仏の教えを説いたのでした。


「悪王に会い、このように悲しい目に遭っております。わが師、釈迦如来、入滅の後なりともあらかたにご覧でございましょう。どうか人をお救い下さい」
 僧は何度も何度も祈りました。
「いつまで祈るんだい」
 盗賊が聞きます。
「もちろん届くまで」
 僧が答えました。
 そして、釈迦如来が丈六の姿で、紫磨黄金の光を放ち空から飛んできました。
 そして、釈迦如来は獄門を踏み破り、僧を救い去っていったのです。
 その混乱のなかで、盗人やほかの囚人も獄から逃げたのでした。
 盗賊は逃げ出した後、金色に輝く釈迦如来が去っていく姿を眺めていました。
「釈迦如来が行った方角へ届くまで行けば、私は天竺に着くのだな」
 盗賊はそう言うと釈迦如来が飛んで行った方へ歩き始めたのでした。

 

聞き伝える昔の話でございます

 

宇治拾遺物語からです。

宇治拾遺物語は仏教ばかりって印象ですね。

神道はどこへいったのか?

 

 

※基本的に聞き伝えるという形で、大筋は変えずに思うままに書いております。